ビットコインマイニング企業、マルキエの暗号特許訴訟に直面

ビットコインマイニング企業を揺さぶる特許訴訟:暗号技術の知的財産を巡る新たな戦い。ビットコインマイニングの未来に暗雲?マルキエ・イノベーションズがマラソンとコア・サイエンティフィックを提訴、暗号技術特許侵害で。

2025-06-03 - 22:49
2025-06-04 - 17:56
 0  5
ビットコインマイニング企業、マルキエの暗号特許訴訟に直面
ビットコイン価格が112,000ドルに達する中、この訴訟は業界の未来を左右する重要な転換点となるかもしれない。

概要

2025年6月3日、米国の暗号資産業界に衝撃が走った。マルキエ・イノベーションズ(Malikie Innovations)が、ビットコインマイニング大手のマラソン・デジタル・ホールディングス(Marathon Digital Holdings, NASDAQ: MARA)とコア・サイエンティフィック(Core Scientific, NASDAQ: CORZ)に対し、米国裁判所で特許侵害訴訟を提起した。訴訟の焦点は、ビットコインブロックチェーンで広く使用されている楕円曲線暗号(Elliptic Curve Cryptography, ECC)に関連する特許で、マルキエはこれをブラックベリー(BlackBerry)から2023年に取得した32,000件の特許ポートフォリオの一部だと主張している。この訴訟は、マイニング業界のコスト構造、競争環境、さらにはビットコインネットワークのセキュリティにまで影響を及ぼす可能性があり、暗号資産コミュニティの注目を集めている。


訴訟の背景:マルキエの特許戦略とブラックベリーの遺産

マルキエ・イノベーションズは、2023年にブラックベリーから32,000件の「非中核」特許を取得した特許管理企業である。これらの特許は、かつてスマートフォン市場で覇権を握ったブラックベリーが開発した暗号技術や通信技術に関するもので、特にECCはビットコインの公開鍵暗号方式の基盤として広く採用されている。訴状によると、マルキエは「ビットコインの設計者がECCを選択したのは、マルキエが所有する特許技術の革新性が認められた結果」と主張し、マラソンとコア・サイエンティフィックがこれらの特許を無許可で使用していると非難している。

ブラックベリーの特許ポートフォリオは、2000年代初頭のモバイル通信ブーム時に蓄積されたもので、セキュリティや暗号化技術に強みを持つ。マルキエはこれを活用し、暗号資産業界を新たなターゲットに据えた形だ。訴訟のタイミングは、ビットコイン価格が2025年5月に112,000ドルを記録し、マラソンが年間マイニング収益7億5,200万ドルを達成するなど、マイニング業界が活況を呈している時期と重なる。この成功が、マルキエにとって高額なロイヤリティや損害賠償を求める絶好の機会を提供したと見られる。


訴訟の詳細:ECCとビットコインマイニング

楕円曲線暗号(ECC)は、ビットコインのトランザクション署名やウォレット生成に不可欠な技術で、公開鍵と秘密鍵のペアを効率的に生成する。ビットコインネットワークでは、すべてのマイニングノードがトランザクション検証にECCを使用し、ブロック生成のプロセスでも間接的に関与する。マルキエの訴訟は、マイニング企業が「ECCベースの暗号メソッドを特許範囲内で使用している」と主張し、具体的には以下を問題視している:

  • 特許の範囲:マルキエが所有する特許は、ECCの特定のアルゴリズム実装や効率化技術をカバー。これがビットコインのプロトコル(例:secp256k1曲線)に該当すると主張。
  • 侵害行為:マラソンとコア・サイエンティフィックのマイニング装置(ASIC)が、特許技術を利用してトランザクション処理を行っている。
  • 損害賠償:マルキエは、過去のマイニング収益の一部に対するロイヤリティと、将来の使用差し止めまたはライセンス料を要求。

マラソンは、世界最大の公開ビットコインマイニング企業(時価総額51.8億ドル)で、2024年7月時点で250,000台のマイニング装置を運用し、31.5 EH/sのハッシュレートを誇る。一方、コア・サイエンティフィックは、北米最大級のデータセンターを活用し、2024年に破産から再建を果たした急成長企業だ。両社はマイニング業界のトッププレイヤーであり、マルキエにとって「訴訟の価値ある標的」であると、ブロガン法律事務所の創設者アーロン・ブロガン氏は指摘する。


業界への影響:マイニングコストとネットワークのセキュリティ

この訴訟がマイニング業界に及ぼす影響は深刻だ。ブロガン氏は、訴訟がマルキエに有利に進めば、他の米国マイニング企業にも同様の訴訟が波及し、業界全体に「壊滅的な結果」を招く可能性があると警告している。特に以下の点が懸念される:

  1. コスト増大
    • ロイヤリティ支払いや訴訟費用がマイニングコストを押し上げ、2025年3月のハッシュプライス下落(2.3%価格下落、CoinGlassデータ)や電気代高騰(ビットコイン1枚の電気コスト:77,400ドル)で既に圧迫されている収益をさらに悪化させる。
    • マラソンの2025年5月27日の記録的な収益(7億5,200万ドル)も、特許料が課されれば大幅に目減りする可能性がある。
  2. ネットワークのセキュリティ
    • 米国マイニング企業が特許料を回避するため運用を縮小する場合、ネットワーク全体のハッシュレートが低下し、51%攻撃のリスクが高まる。ブロガンは「ビットコインネットワークのセキュリティが損なわれる可能性がある」と述べる。
    • 2025年4月のTheMinerMagレポートによると、公開マイニング企業は3月に生産したBTCの40%以上を売却しており、コスト圧力が高まっている中で特許訴訟はさらなる負担となる。
  3. グローバル競争
    • パキスタン(2,000MWの電力割り当て)やロシア(マイニング税法導入)など、海外でのマイニング支援策が進む中、米国のマイニング企業は競争力を失う可能性がある。2025年4月の米国関税(マイニング部品に24%)もコスト増要因だ。

しかし、ブロガン氏は、マルキエが「業界全体を崩壊させるより、特許の有効期限(通常20年)まで安定したライセンス料を確保する戦略を取る可能性が高い」と予測。AMLBotの法務責任者ニコ・デムチュク氏は、個々のビットコインユーザーへの訴訟は「経済的に非現実的」とし、個人マイナーの影響は限定的と見る。


暗号資産業界の反応:特許トロールの脅威

X上の暗号資産コミュニティでは、この訴訟が「特許トロール(patent troll)」による攻撃として議論されている。@BillHughesDCは「ビットコインへの新たな知的財産(IP)攻撃」と表現し、過去のクレイグ・ライトによる自己主張(サトシ・ナカモト名乗り)になぞらえた。@CoinnessGLや@JONDONI_CRYPTOは、訴訟がマイニング業界の不確実性を高めると懸念を表明。一方で、@ftf_vcは「暗号資産の法務リスクが浮き彫りになった」と冷静に分析している。

過去にも、暗号資産業界では特許訴訟が注目を集めた。2025年5月20日、BancorプロトコルがUniswapに対し、自動市場形成(AMM)技術の特許侵害で提訴し、損害賠償を求めた例がある。Bancorは「ブロックチェーン革新の基盤技術が無許可で使用された」と主張し、業界に波紋を広げた。マルキエの訴訟は、これに続く特許戦略の一環と見られる。


ビットコインの技術的背景:ECCの重要性と特許の曖昧さ

ビットコインのECC(特にsecp256k1)は、2008年のサトシ・ナカモトのホワイトペーパー以来、オープンソースのプロトコルとして標準化されている。マルキエの特許がどの程度この実装をカバーするかは不明だが、訴状では「ビットコイン設計者が採用したECC技術が特許範囲に含まれる」と強調。問題は、特許が具体的な実装(例:ソフトウェアコード)ではなく、抽象的なアルゴリズムや概念を対象としている可能性だ。これは「特許トロール」の典型的手法で、広範な技術をカバーする特許を盾に訴訟を仕掛ける戦略が業界で批判されている。

暗号資産コミュニティの一部は、ビットコインのオープンソース性と特許の有効性に疑問を呈している。@ReggieMiddletonは、nChainの特許(US Pat. 12,277,552)がマイニングプロトコルに適用可能か疑問を投げかけ、マルキエの訴訟も同様の曖昧さがあると示唆している。


今後の展望:マイニング業界の対応策

マラソンとコア・サイエンティフィックは、訴訟への公式コメントを控えているが、以下のような対応が予想される:

  1. 和解交渉
    • 訴訟コスト(例:Quinn Emanuelの弁護士費用:時給2,030ドル)を回避するため、ライセンス契約を検討。
    • マルキエは長期的なロイヤリティ収入を優先する可能性が高い。
  2. 技術的回避
    • 別の暗号方式(例:Schnorr署名への移行加速)を模索。ただし、ビットコインプロトコルの変更はネットワーク全体のコンセンサスが必要で、実現は困難。
  3. 業界団結
    • マイニング企業が共同で訴訟に対抗(例:特許無効化請求)。2024年11月のSEC訴訟(Coinbaseなど)で業界が団結した前例がある。

投資家は、マラソン(MARA)とコア・サイエンティフィック(CORZ)の株価動向に注目している。2025年5月27日、マラソンの株価はビットコイン高騰(112,000ドル)で急騰したが、訴訟ニュースで短期的な下落リスクが指摘されている。

ポイント:

  • 業界への影響:ビットコインマイニングは、暗号資産エコシステムの基盤。この訴訟は、マイニングコストの上昇やネットワークの安定性に直結し、投資家やマイナーにとって必見。
  • ユニークな視点:ECC特許の曖昧さと特許トロールの戦略は、暗号資産のオープンソース哲学と対立。技術と法務の交差点を深掘り。
  • データ駆動:マラソンの収益(7億5,200万ドル)、ハッシュレート(31.5 EH/s)、電気コスト(77,400ドル/BTC)など、具体的な数字で説得力。
  • コミュニティの声:Xでの反応(@CoinNews、@BillHughesDC)を取り入れ、読者の共感を誘う。

結論

マルキエ・イノベーションズによるビットコインマイニング企業への特許訴訟は、暗号資産業界の新たな法務リスクを浮き彫りにした。マラソン・デジタルとコア・サイエンティフィックは、ECC特許の侵害を巡る戦いに直面し、その結果はマイニングコスト、ネットワークセキュリティ、グローバル競争に影響を及ぼす可能性がある。ビットコイン価格が112,000ドルに達する中、この訴訟は業界の未来を左右する重要な転換点となるかもしれない。

What's Your Reaction?

like

dislike

love

funny

angry

sad

wow

だっちゃんxpr xrpの大ファンす。